スーパー銭湯『極楽湯 千葉稲毛店』が素晴らしいと思う理由について
風呂が好きだ。狂おしいほどに好きだ。
これは2011年くらいかな。シンガポールに住んでいた20代、湯船恋しさのあまり月給の半分以上を突っ込んで住んだペントハウスのお風呂。エロいジャグジーと、左側はシャワールームだ。
これは2018年。当時住んでいたスペインから日本に戻る途中、イスタンブールに立ち寄ってハマームという公衆浴場を体験したときの一枚だ。
風呂が、好きだ。
コロナ禍で、僕の風呂への偏愛はますます強まった。一日中自室に籠ってPCと向き合った後、夕方からスーパー銭湯に出かけるときの気持ちは格別だ。
サウナにも興味を持ち、とりあえずサ道を全話見た。評判の高いサウナである北欧やニューウイングへ足を伸ばしてみた。名古屋出張があったからついでにウェルビーも行った。サウナラボではメリノウール100%のサウナハット買っちゃった。(愛用してる)
そんな風呂好きサウナ好きの僕が現時点で最高だと思っているのがスーパー銭湯『極楽湯 千葉稲毛店』だ。この間、極楽湯 千葉稲毛店の露天風呂に浸かりながら、「このスーパー銭湯は、僕と同じタイプの嗜好を持った人間が、明確な意図を持ってこの形に作り上げている」と感じたので、それを広く伝えるためこうして筆をとった。
そんなわけで、ここから本題だ。ちゃんと見出しもつけていく。
スーパー銭湯とは
そもそも、スーパー銭湯とは何だろうか。Wikipediaの『スーパー銭湯』の項目では以下のように定義されている。
スーパー銭湯(スーパーせんとう)は、日本における公衆浴場の一種であり、銭湯の形態の一つ。公衆浴場法および各都道府県の公衆浴場条例上では物価統制令の制限を受けない「その他の公衆浴場」に分類され、施設規模や利用料金は銭湯と健康ランドの中間的存在である。
銭湯は値段が安く、人口密集地域にある
いわゆる『銭湯』は都道府県によって値段が統制されている(たとえば東京都は470円)代わりに、水道代がほとんどタダになるといった様々な便宜が図られている。
値段以外の特徴として、提供するサービスが基本的に入浴のみであるために客単価が低いことがある。厚生労働省の調査によれば客単価は475円とのことなので「基本的にみんなお風呂だけ。たまに食後のコーヒー牛乳を飲む人がいるくらい」といったところだろう。
損益分岐点を越えるために客を高速で回転させなくてはいけないので、人口密集地域にしか存在していない。(というかそれ以外はみんな潰れた)
スーパー銭湯は主に郊外にあり、客単価高め
スーパー銭湯の多くは、郊外にある。比較的土地が安い場所に大きな施設を作り、近隣地域から客を惹きつける。客の多くは、車でやってくる。入浴料は600〜900円くらいに設定されており、基本的に週末は平日より値段が高い。食事やマッサージ・アカスリ等のサービスも館内で提供するため、客単価は1,000円を超える。この「安い土地」と「比較的高い客単価」の組み合わせにより、施設への投資は3〜5年で回収できると言われている。
ちなみに、株式会社極楽湯ホールディングス社長の新川氏によれば、新規地域への出店の基準は「車で15分以内の場所に15万人が住んでいること」だそうだ。
サウナ専門施設は、値段もサービスも玄人向け
サウナがマジで好きだ、という人が行くのがサウナ専門施設である。
サウナ好きは一般的に「サウナ→水風呂→椅子に座って休憩」の流れで巡回するので、サウナ専門施設のサウナはさまざまな趣向が凝らしてあり、水風呂は一般的にスーパー銭湯よりも設定温度が低く、裸で休憩する場所(外気浴スペース)も広い。
一方で、湯船に関しては必要最低限、ということが多く、また基本入浴料も安くて1,000円〜という感じである。素人向きではない。
チャートで整理すると、こんな感じ。
スーパー銭湯という業態の隙のなさについて
改めてチャートを見ると、スーパー銭湯が巨大なハコのサイズと「駅から遠い」といった利便性の悪さにもかかわらず、客を惹きつける理由がわかる。顧客のさまざまな需要に幅広く対応しているのだ。
スーパー銭湯の店舗デザインとは
郊外に大きな店舗を作り、幅広いサービスを提供することで周辺から様々なタイプの顧客を集客するのがスーパー銭湯だということがわかった。
とはいえ、いくら郊外といえど土地のサイズ、店舗のサイズは有限だ。その有限な容積の中に、何をどういう形で配置していくのかによって各スーパー銭湯の「色」が出てくることになる。
スーパー銭湯は以下のようなモジュールを組み合わせることにより出来上がっている。
- 受付
- 脱衣スペース
- 内風呂
- 露天風呂
- マッサージ/アカスリ等
- 床屋/美容室
- 食事エリア
- 休憩エリア
- ゲームコーナー
『入浴体験』に特化した極楽湯 千葉稲毛店の選択と集中
極楽湯 千葉稲毛店は潔いスーパー銭湯である。他のスーパー銭湯が当然のように用意する設備を大胆に削りながら、質の良い入浴体験を、安価に提供することにこだわっていると言える。
一つずつ説明していこう。
安さの実現
極楽湯の入浴料は大人の場合平日760円、土日祝日870円だが、常に何かしらのクーポンを配っているので100円引きでの入浴は余裕だ。さらに、土日祝日も使える回数券は10枚で6,300円。定期的にさらなる値引きキャンペーンをやっており、今なら10枚で5,400円。1回540円で入浴できるというわけだ。
僕は、この料金の安さは、後述する「選択と集中」により実現されたものだと思っている。
ちなみに上場しており、株主優待で入浴券をくれる。僕も、ビジネス応援の気持ちも込めて200株保有している。
露天風呂エリアの広さと快適さに全振り
まずは、以下の写真を見てほしい。
内風呂を抜けて、露天スペースに出たときに目に飛び込んでくる景色だ。
1回数百円で来れる銭湯に、このサイズの露天風呂。僕の経験からすると、かなりレアな光景だ。
奥の階段を登ったところには高濃度炭酸泉とうたた寝湯という横になれるスペースがあり、2種類のサウナと水風呂も露天エリアに設置されている。
別の角度から見るとこんな感じ。
お湯の色が乳白色なのは、独自に調合した業務用入浴剤と人工温泉用の装置を使って温泉感を出しているらしい。極楽湯 千葉稲毛店から600メートルほどの場所にある別のスーパー銭湯『蘭々の湯(ららのゆ)』が天然温泉を売りにしていることからも、極楽湯 千葉稲毛店の「名より実を取る」姿勢が見られる。
削られた休憩スペースと脱衣スペース
露天風呂に大きくリソースを割く傍ら、よそのスーパー銭湯と比べて明らかに削られている部分がある。
まずは、リクライニングシートが並んだ、いわゆる『休憩室』だ。これに関しては、そもそも存在しない。食事エリアの奥にある畳でごろ寝できるようになっており、実際に寝ている人を見かける。休憩エリアと食事エリアを一体化させる発想、大胆すぎんか。
2階建てにすることでスペースを確保しているスーパー銭湯も多いが、極楽湯 千葉稲毛店は潔く平家づくりだ。その分、天井は高い。
なお、脱衣所も狭い。脱衣スペースの狭さを嘆いている方がいらっしゃったのでこの間行ったときに改めて確認してみたけど、たしかに狭い。
上で紹介した要素以外も含めて、パッと確認できるチャートを作っておいたのでよかったら見てみてほしい。
僕はお風呂に救われてきた
体が疲れたとき、ストレスでしんどいとき、人生にちょっと疲れたとき、お風呂に浸かることで、僕は乗り切ってきた。ほんの数百円で、素晴らしい入浴体験を提供してくれるお風呂屋さんには感謝の気持ちしかないし、僕も何かしら、人の助けや救いになるようなことをこれからの人生でしていけたらと思っている。
極楽湯 千葉稲毛店が成し遂げ、現在も提供し続けている価値へのリスペクトのあまり、3,000字を超えるエントリーを生成してしまった。ありがとう極楽湯 千葉稲毛店。僕も頑張るよ。